現在「暮らしと。」の写真集は7種。各テーマを担当していただいたカメラマンさんをご紹介します。

「グリーン」「子ども」を担当

一之瀬 ちひろ(イチノセ チヒロ)
1975年東京生まれ。2000年コニカフォトプレミオ入選。2012年銀座ニコンサロン個展「KITSILANO」。作品集に『ON THE HORIZON』(ARTS AND CRAFTS)『KITSILANO』(PRELIBRI)がある。2011年よりリトルブックレーベル『PRELIBRI』の活動を始める。また、雑誌「暮しの手帖」第4世紀55〜67号の巻頭扉写真を担当。
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撮影の感想
団地に住んだことがないのに団地に来ると落ち着くのはなぜだろう。ここにいれば大丈夫という、確信はないけど信頼できる安心感が、家の中だけじゃなくて団地内の共有の空間にも漂っていて、団地には外と世界と中の世界を緩やかに隔てている見えない結界のようなものがあるのじゃないか、と思わせる。そこでは時間もパラレルに流れているように感じる。建物の構造とか敷地の使い方とか、そういうことで説明がつく部分もあるだろう。でもそれだけじゃない。もしかしたら団地には子どもの時間が流れているのかもしれないな、と思った。団地にいる大人はみな、特別で無条件でユートピアのような子どもの時間を、そこに暮らす子どもたちを見守ることでもう一度体験しなおしている。大人と子どもの記憶が入り交じるノスタルジーが団地にはある。

「コミュニティー」を担当

ゆかい(ユカイ)
2006年設立。写真家・池田晶紀が主宰する写真事務所。ただ、川瀬一絵、池ノ谷侑花といった写真家のメンバーとともに書籍・雑誌・CD/DVDジャケット・広告・Web などの写真を数多く手がけ、映像制作やコミッションワークなども行っている。展覧会やワークショップの企画・運営、自主出版の活動など、写真を軸としたものづくりを多角的に展開。
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撮影の感想
ここにはコミュニティーがある。だれかを喜ばすために、みんなが知恵やアイデアを出し合っていた。そのことの意味を実感出来る現場に出会えた。(池田晶紀)/幼少期、団地住まいでした。落ち葉の大掃除にお邪魔させていただきましたが、一生懸命ホウキを握る子ども達に勝手にかつての自分を重ねて感慨に浸っていました。(ただ)/みんなが愛でるヤギがいて、子どもたちのために奮闘するサンタクロースがいて、雨あがりの夜の、明るくて大きな輪っかの盆踊りがありました。(川瀬一絵)/「サンセルフホテル」のみなさんのおもてなしの気持ちや、お客様の「これからどんなことが起こるんだろう?」というワクワクソワソワが伝わってきて、私も楽しくなりました。(池ノ谷侑花)

「スポーツ」を担当

山本哲也(ヤマモトテツヤ)
1969年大阪生まれ。1995年よりフリーランスフォトグラファーとして活動開始。雑誌を中心に国内外で作品を発表。2001年ミニ写真 集『INSTANT PICTURES』、2003年写真集『UNITED STATES』(ピエブックス)を発表。日々、旅をしながら写真を撮り続ける。またインスタントカメラを使い、子どもへ写真の魅力を伝えるワークショップも開催。
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撮影の感想
今、団地は高齢の人が多く住んでいて、エレベーターがないとか、都心から遠いといった不便さが際立って見えるけれども、逆手に取れば、若い人はむしろ自然に近くなったり、そういう中でスポーツなどが楽しめるという捉え方ができるのかもしれない。たとえば都心で10km走りたいと思ったら、信号や車の量や人の多さなど、いろんなことを気にしなくてはならない。かといって、公園を何周と決めて走るのも毎日だと飽きが来る。団地だったら公園のようでもあり、車も入ってきにくく、今日はこう走ろう、明日はまた違う道を行こう、というアレンジもしやすい。また今回訪れた別の団地では、玄関を出ればすぐにロードバイクで走れる、というところもあった。都心に住んで高い家賃を払って、自然と遊ぶのにもわざわざ出掛けてお金をかけなくてはいけないのなら、こういうところに住んで身近な環境を感じながら遊ぶのはとても快適ではないでしょうか。

「商店」を担当

浅田政志(アサダマサシ)
1979年三重県生まれ。日本写真映像専門学校在学中より、自身を含めた家族が被写体となった写真を撮り始める。写真集『浅田家』 (赤々舎刊)で第34回木村伊兵衛写真賞受賞。その他写真集に『NEW LIFE』(赤々舎刊)、『家族新聞』(幻冬舎刊)、『八戸レビュウ』(美術出版社刊)、『南予写真NANYO』(日本文芸社刊)、『家族写真は「 」である。』(亜紀書房刊)など。
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撮影の感想
団地に来るという体験自体、今回の撮影がほとんど初めてでした。実家の三重にいたときも身近に団地があったという記憶はありません。だから言葉だけで知っている団地にはどこか過去のものという先入観だけがあって、現在形で自分のような年代が住める場所というイメージが事前にはありませんでした。でも実際に来て、住んでみたいなと思ってしまいました。中に公園もあって、子どもが生まれても生活しやすいだろうし、行きつけの果物屋さんとか喫茶店とかが近くにあるのもいい。今回撮影させてもらった商店のみなさんの、気軽にしゃべってくるあの感じも心地良くて。みんながすごく近くに感じられる場所という感覚がありました。「オレ、団地に住んでるんだ」といった、ちょっとした団結めいた感じも、最近そういうことをなかなか感じられていない日常だから余計にいいなと思いました。

「ごはん」を担当

大沼ショージ(オオヌマショージ)
1970年神奈川県横須賀生まれ。鎌倉考古学隊員を経てフォトグラファーに。作品には『廃墟の博物學』『SENTOー廿世紀銭湯写真集ー』(ともにDANぼ)、『民族』(河出書房新社)、『もののつづき』『コップとて』(ともに凹凸舎)などがある。出版、活版印刷局凹凸舎主宰。2010年には、フォトグラファーの萬田康文と写真事務所「カワウソ」を設立。最近では移動写真館を各地で開催。
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撮影の感想
残念ながら、私は団地に住んだ経験がない。それをふまえ、勝手なことを言わせてもらえば、一言でうらやましい! 中学時代、通学路の途中に同級生が住んでいる団地があり、そこへ友達が帰って行くのを見るたびに、田舎の一軒家に住む私はうらやましくてたまりませんでした。同じ敷地、同じ建物に友達が住んでいる、しかも何人も! それぞれにプライベートがあり、かつ一つのコミュニティーの中に属す、同じ時間が流れる場所。うらやましかったな。でも、今だったらできるかも! 同じ価値観を持った人たちが同じ団地に住み、何かを一緒に分かち合い、作り上げていくことが! 結婚もしていないし子どももいない私にとっては夢のような脳内団地が広がっています。いつの日か現実になることを夢に見て……。

「部屋」を担当

平野太呂(ヒラノタロ)
1973年東京生まれ。武蔵野美術大学で写真を学び、その後講談社でアシスタントを務めたのちフリーに。広告、CDジャケット、ファッション誌、カルチャー誌などで活躍中。2004年には、渋谷区上原にギャラリー「NO.12 GALLERY」を立ち上げる。主な作品に、写真集『POOL』(リトルモア)、CDフォトブック『ばらばら』(星野源と共著/リトルモア)、『東京の仕事場』(マガジンハウス)など。
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撮影の感想
ひとくちに団地と言っても、住み手の考え方によって色々な顔が見えてくるということがよく分かった撮影でした。そのバリエーションが多ければ多いほど、団地の可能性も大きいということ。住み手の考え方によって、住まいが変わる。撮影しながら、自分の中にある、団地に対する画一的なイメージが崩れていくのを感じました。